熊本大学附属図書館 研究者インタビュー

熊本大学学術リポジトリ 研究者インタビューのページです。

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熊本大学学術リポジトリ1万件突破 記念インタビュー 冨永昌人先生(大学院自然科学研究科(工学系・大学院))

熊本大学研究者情報 : 冨永昌人先生

  • 熊本大学学術リポジトリ公開から6年目を迎えた平成24年5月、リポジトリ登録論文数が1万件に到達しました。

  • 記念すべき1万件目は、大学院自然科学研究科(工学系・大学院)准教授 冨永昌人先生の論文「酵素修飾ナノ構造炭素電極とバイオ燃料電池」で、平成24年5月19日にリポジトリへ登録したものです。


冨永先生の研究室にて
冨永先生(左)の研究室にて


Q.先生の研究内容や専門分野および、今回1万件目の論文についてお聞かせください。
 専門分野は電気化学です。電気的なエネルギーと物質的なエネルギーの変換を扱う学問です。例えば、近年話題となっている太陽電池・燃料電池・リチウムイオン電池といった電池関係は電気化学と密接に関連しています。

 私達の体の中ではいろいろな酵素が反応して代謝が行われています。その代謝反応も電気化学的な観点から見ると、多くの場合で酸化と還元反応が起こっています。車に搭載されているバッテリー(鉛蓄電池)のような金属の反応から、我々の生体内での反応まで、酸化もしくは還元反応を含むすべての反応を電気化学の分野として考えることができます。その中でも私達が最近精力的に取り組んでいるのが、今回一万件目の論文となった「酵素を使った燃料電池」です。通常、燃料電池というと、エネファームがよく知られていると思います。エネファームは物質を変換してエネルギーを取り出す際に金属触媒が使われています。現在、私達が研究しているのは、金属ではなく酵素を触媒として使用し、燃料電池を作ろうというものです。

 もう少し詳しくお話ししますと、エネファームは家庭用に使われている都市ガス(主成分はメタンガス)から水素を取り出し、その水素はエネファーム中で空気中の酸素と反応して水になります。酸素は水素と反応して還元されます。一方、水素側からみると水(H2O)になることは酸化反応であり、この酸化と還元反応の組み合わせにより発電ができます。私達の体内でも、たとえば摂取した果糖と酸素に酵素が加わり、酸化と還元反応が起きてエネルギーを作っています。ただ私達の体は電気を蓄えたり発したりすることはできませんので、アデノシン三リン酸(ATP)などの化学エネルギーとして蓄えています。体の代謝反応も大きな視点から見ると、燃料電池として考えることもできると思っています。
現在の研究は、私達の体の中の仕組みを模倣したような燃料電池の作製、と考えることができると思います。

今回の一万件の論文については、酵素以外のキーワードが二点あり、一点は、ナノ炭素材料を用いていることです。燃料電池には電極が必要ですが、金属を使うとコストが高くなり、重量も重くなりますので、炭素を材料として使っています。もう一点は、構造を工夫することで効率の向上を図っていることです。大きな電流を得るためには反応する表面積を広くしないといけません。研究で用いているカーボンナノチューブは炭素のみから成っており、直径が1ナノメーター、長さが数マイクロメーターの一本の線のようなもので、チューブ状になっています。この炭素素材は導電性が非常に高く、構造も安定で、耐久性も高いため、本燃料電池の電極として有効に使用することができます。

Q.研究を始めたきっかけについてお教えいただけますか?
 大学四年生の時、現学長・谷口 功先生の研究室(当時は安河内研究室でしたが)に所属していました。研究室では、酵素などの生体分子と電極との電気化学的なコミュニケーション(電子授受反応)について研究が行われていました。この分野は研究領域として新しく、当時では十年くらい前から始まった分野でした。私が研究室へ入った時は未知の領域で将来性をすごく感じました。当時から谷口学長は、国際的に活躍されており、そのような研究者になりたいと思ったことがきっかけです。それと、世界の有力大学の図書館には研究論文の国際誌が蔵書されています。その雑誌に論文が掲載されると自分の名前が残ることになります。少し大げさかもしれませんが、世界の大学附属図書館の蔵書に自分の名前を残すことができる、ということがとても新鮮でした。

Q.今後の抱負を是非!
 現在、酵素を反応触媒として使った燃料電池の開発に取り組んでおり、この燃料電池は年々出力が上がっています。本分野は10年程前から世界的に本格的な研究が始まり、ここ10年間で出力が100倍まで上がりました。ただ、100倍上がっても今は1平方センチメートルあたり数10ミリワットのレベルです。実用化にはまだまだですが、モーター程度なら簡単に回せる出力を得ています。10年間に100倍上がったので、今後10年間にはさらに100倍・・・とまでは無理かも知れませんが、たとえ10倍でも、1平方センチメートルあたり数百ミリワットとなり出力としては十分実用化レベルです。エネファームは1平方センチメートルあたりおおよそ二百ミリワットです。ですから、今の10倍程を上げることができれば、エネファームくらいのレベルには到達できると考えています。実用化には色々な課題がありますが、解決しないといけない課題はわかってきていますので、そこをどう突破していくか、模索しています。また今後、関連企業との実用化をめざした共同研究も重要になると考えています。リポジトリ1万件目の登録論文は、九州大学の中嶋先生との共同研究ですが、このように他大学との連携もさらに進むと考えています。


Q.リポジトリに関することについて、お尋ねします。リポジトリで論文を公開した後、なにか反応はありましたか?
 直接感じることはまだありませんが、リポジトリの無料公開によりなんらかの場所で、私の論文を目にしてくれる機会が増えると思います。雑誌に掲載される論文は、基本的に有料公開です。本学を含め、国立大学では電子ジャーナルの導入が進んでおり、利用できる大学も多いと思います。出版社版の論文を直接見ることができる大学は、出版社サイトに行くと思いますが、そうでない環境の大学も結構ありますし、特に海外では利用できない大学・研究機関が多いと思います。そういった大学や研究所の研究者に論文を読んで頂き、活用していただければ非常にいいことであると思っています。あと、大学に所属されていない一般の方々や学生の方に見ていただければいいと思います。

 特許等ですぐに研究内容を公開できない論文もありますが、そのような場合は時間を置いて発表しています。最近国際誌に論文を投稿し受理されましたが、その内容は2年程前の研究でした。昨年度特許を申請し、ようやく投稿できるようになったものです。特許を考えるとすぐに発表できませんので、もどかしい所はあります。

Q.今後のリポジトリ活動について、なんでも結構です。ご意見をお願いします。
 リポジトリは大学として情報を発信する場として非常に有効と思っています。最近はかなりコンテンツも充実してきていますね。ただ、メニューの表記等は、現在すべて日本語です。出版社版の論文を読むことができない海外の方々へ発信するためには、英語表記も必要ではないでしょうか。そうすることで、海外からのアクセスもしやすくなり、本学のアピールにもつながると思います。海外からアクセスがあると、熊本大学でこのような研究をしている先生がいることがわかり、海外学生の意欲、ひいては留学生の確保にもつながると思います。

 通常、海外の学生や研究者が熊大のホームページを見ることはほとんどないと思いますが、サーチエンジン等でリポジトリの論文を見つけ、論文を開いた際、余白に大学のロゴや透かし等が入っていたりすると、そこで熊本大学についてアピールできるため、良いのではないかと思います。

 それから、先ほど私の論文のアクセス統計を少し見せていただいて、論文として入手できないものを欲しがっているのかなと思いました。学会の要旨集等は、学会に参加しないともらえないものなので、そのようなものをリポジトリへ登録できれば良いと思っています。

Q.附属図書館への要望はございますか?
 全学への広報でメールを使用することがあると思いますが、理工系の研究者に対しては、簡潔な内容で構わないと思います。みなさん忙しく、メールの数も多く、なかなかメールの詳細まで読むことが難しいです。30秒程度で概要がわかるよう、ポイントを絞って書いていただければ良いと思います。

Q.最後に、先生のオススメの図書をお教えください。
 読みたい本は沢山ありますが、講談社ブルーバックスの「大学生物学の教科書」等はオススメですね。この本は、米国の大学の教養教育に用いられている生物学の教科書のようですが、生物学の本質を非常に分かりやすく書いてあります。私が今読んでも勉強になります。




冨永先生、ありがとうございました。

冨永先生が「熊本大学学術リポジトリ」に登録されている論文をご覧になりたい方は下記リストをご覧ください。
冨永昌人先生 熊本大学学術リポジトリ 登録論文リスト





編集後記
 ついにコンテンツ数1万件を突破しました。これまで、冨永先生をはじめ、熊本大学の沢山の先生方が、多数の論文をリポジトリに登録してきた結果と思います。日頃から論文を登録していただいている先生方、いつも論文登録ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。そして、このインタビュー記事を見て、手持ちの論文をリポジトリに登録してみたくなった先生方、是非一度図書館電子情報担当にご連絡をお願いします。
論文登録させてくださーい!

熊本大学附属図書館 問い合わせ先一覧

インタビュー日時
平成24年6月7日
インタビュアー
浜崎(熊本大学教育研究推進部 図書館ユニット 雑誌担当)
記録
森下(熊本大学教育研究推進部 図書館ユニット 電子情報担当)
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浪平隆男先生 (バイオエレクトリクス研究センター)

このインタビューは、九州地区の大学図書館が合同で開催する
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熊本大学 バイオエレクトリクス研究センター 浪平隆男先生
熊本大学研究者情報

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Q.先生のご専門について教えてください。

私はバイオエレクトリクス研究センターに所属しています。名前にバイオと入っていますが、そのあとにエレクトリクスと入っているように、バイオが専門ではなくて電気がもともとの専門です。その電気の中でも、日常使われている直流電力や交流電力とは異なる、第三の電力として期待されているパルス電力について研究しており、環境浄化技術を中心とした産業応用化を目指しています。

Q.環境の浄化というのは具体的にはどういったことですか?

パルス電力を使うと人工的に小さな雷をたくさん発生させることができます。その雷を空気や酸素の中で発生させると、酸素がオゾンと呼ばれるものに変化します。このオゾンは、殺菌・脱臭・脱色能力があり、様々に空気を浄化してくれます。それとはまた別に、自動車や火力発電所の排気ガスの中で小さな雷を起こすと、その中に入っている一酸化窒素(NO)という有害物質を、無害な窒素(N2)と酸素(O2)に分解できるようになります。

それから、もう少しパルス電力を大きくしていくと、気体中ではなくて、コンクリートのような固い物の中でも雷を発生させることができるようになります。コンクリートというのは骨材と呼ばれる小石とセメントの塊なのですが、雷をコンクリートの中で発生させると、小石からセメントがきれいにはがれます。骨材が原材料レベルまできれいに戻るので、再利用が簡単になる、といった研究もしております。

Q.研究を始められたきっかけは何ですか?

学部4年生の時に卒業研究でパルス電力の研究に携わり、それから一貫して続けています。

Q.今後進めていきたい研究はありますか?

現在は空気浄化やコンクリートリサイクルに関して研究していますが、今後は、液体や土壌の浄化、そういったものにこの技術をうまく応用できないか、と考えています。そうすることで、気体・液体・固体とすべての物質に対するトータルな浄化技術として完成できたら、と思っております。

Q.そのような大きなパワーというか、パルスを発生させる時に、どれぐらいのエネルギーがかかるのですか?

こういった雷やコンクリート破壊と聞くと、非常に大きなエネルギーを使うのではないかと思われるのですが、確かに瞬間的なエネルギー、電力と呼ばれるものは、非常に大きく、メガワット(MW)・ギガワット(GW)オーダーのものが発生するのですけど、その発生時間は非常に短くて、10-6秒から10-9秒といった時間です。そのため、発生電力と発生時間の積である消費エネルギーとしては非常に小さくなります。例えば、コンクリートを破壊する雷を100回発生させたとしても、1円の電気代にも満たないぐらいの消費エネルギーとなります。

Q.現在、そういったパルスを発生させられる機械というのは、熊本大学のような研究施設にしかないんでしょうか。

現時点では、市販されているパルス電源というのはございません。やはり特殊な電源となりますので、我々は自分で作って、実験・研究を進めています。今後、環境浄化技術として応用が進むと、やがて汎用機という形で世の中に出てくることになると思います。そういった汎用機の開発にも携わることが出来ればと考えております。

Q.実用化の見通しはありますか?

先ほど紹介しましたオゾン発生に関しましては、現在4つの企業と共同研究をしています。それぞれ用途は違うのですが、実用化に向けて研究を進めておりまして、早ければ4-5年後に製品が世に出れば、と考えております。それから、コンクリートリサイクルの方は、既にパイロットプラントが出来上がっておりまして、現在、熊本大学の地域共同ラボラトリーにて運転しています。そこではいくつかの企業とコンソーシアムを組み、土木業界でどのように利用していくかについて話をしている段階に入っています。

技術は完成するだけではなかなか世に出ていかず、それをどのようにビジネスへつなげていくか、というのがコンクリートリサイクルに関する一つの課題になっています。例えば、コンクリートの骨材・小石はうまくリサイクルできるようになるのですが、そのリサイクルした骨材は手間をかけているため、天然の骨材よりもコストが高くついてしまいます。そのため、そこには何らかの手(考え)が入らないと再生した骨材が世に流通しない、ということになります。コンソーシアムでは、県や市などの自治体に対して、再生紙と同様に、再生骨材を使ったコンクリート、再生コンクリートを積極的に使ってほしい、という問いかけなどを通して、再生されたものをうまく世の中にだすことを目指しています。

Q.『熊本大学学術リポジトリ』を知ったきっかけは何ですか?

附属図書館の担当者からの「この論文(浪平先生の論文)をリポジトリに収録したい。」という問い合わせがきっかけです。

Q.熊本大学に限らず、リポジトリというものがあるというのはご存じでしたか?

当時はリポジトリとして認識していませんでしたが、インターネットで論文を検索すると、どこかの大学図書館のwebサイトに飛んで、そこから原稿が出てきたりしてたので、その大学独自にアーカイブをやっているのかな、と思っていました。そういったときに、(熊本大学の)図書館からの問い合わせで「ああ、リポジトリだったんだ。」と認識しました。

Q.リポジトリに登録して、何か反応はありましたか?

特に実感としてはないのですが・・・。ひょっとしたら、リポジトリからの発信情報を通して、論文のサイテーション数が増加しているのかもしれません。私はIEEEを中心に論文を出していますが、その電子ジャーナルはお金を払わないと見れません。そのため、IEEEへの掲載論文と同様の原稿が無料のリポジトリを通じて発信されることで、他の論文へのサイテーションとして反映されるのかな、と思います。

Q.リポジトリなどで論文を無料公開することについて、何かメリットや意義を感じられていることがありましたら教えてください。

やはり、だれでも気軽に論文を読めるというのはいいことだと思います。我々の書いている論文は、大げさではありますが「人類の財産」とも言えますので、一部の人が独り占めするのではなく、すべての人で共有できた方がいい、と思います。

Q.オープンアクセス運動についてご意見やご感想があれば、教えてください。

ぜひ、積極的に推進してほしいですね。

浪平先生、ありがとうございました。

浪平先生が「熊本大学学術リポジトリ」に登録されている論文をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
浪平隆男先生 熊本大学学術リポジトリ 登録論文リスト

インタビュー日
2011年10月19日
インタビュー担当
廣田(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 利用相談担当)
記録担当
藤浦(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 電子情報担当)

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安仁屋勝先生(理学部)

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熊本大学理学部 物理学科 安仁屋勝先生
熊本大学研究者情報

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Q.先生の専門分野についてお教えください。
 専門分野は物性物理学の理論で、固体イオニクスや構造不規則系の研究を行なっています。
エレクトロニクスという言葉はどこかで聞いたことがあるかと思います。電子が物質中を動き回って色々な現象が起きます。これらの現象、更にはこれらの応用までを含めた分野のことをエレクトロニクスと言います。それに対して、電子ではなく、イオンが固体中をあたかも液体中と同じように動き回る物質群があります。固体中におけるイオンの運動とそれに伴う現象、更にはこれらの現象の応用までを含めた分野の総称を一般的に固体イオニクスと言います。
 構造不規則系とは、原子が結晶のように規則正しく並んでいるのではなく、ランダムな原子配列をもつ物質のことを言います。自然界には原子が規則正しく並んでいない液体やガラス等の物質も数多く存在しますが、これらの物質が示す現象の物理的背景は謎だらけです。また、それらを記述する理論的枠組もまだよくわかっていません。
 これら二つを主なテーマとして研究しています。

Q.現在の研究について教えて下さい。
 いくつかの研究を行なっていますが、固体イオニクスと構造不規則系の二つを組み合わせた超イオン導電ガラスにウェイトを置いた研究をしています。超イオン導電ガラスはガラスの一種ですが、ガラスの中でイオンが動くメカニズムを明らかにする研究や、中距離に渡って原子がどのように並んでいるか、また、ガラスの構造と性質との関係を明らかにする研究等を行なっています。
 液体が凍結された状態をガラスと呼びますが、ガラス化の過程も研究しています。分かりやすくいえば、液体の温度を下げていくと、時間と共に配置を変えながら運動していた原子の動きが鈍くなり、ある温度で固まってガラスになります。すなわち、温度の降下や時間の経過と共に液体中での原子の並び方や連結の仕方が変わっていきます。専門用語では構造緩和と言いますが、それの機構に関する研究をしています。
 イオン導電性ガラスの中には光を当てることによって、通常とはかなり異なる振舞いを示すものもあります。こういった性質と関連した超イオン伝導と非線形光学に関する研究や、アモルファス半導体における光誘起現象の研究も行なっています。他には、超イオン導電体の結合性と物性、イオン導電体の熱電効果、イオン液体、液体半導体、金属ガラス等の基礎物性の研究をしています。

Q.この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
 マスターとドクターの頃の経験です。マスターの頃は液体金属の研究を行ない、ドクターに進学してからイオン伝導の研究を始めました。
 私の研究分野は物理学だけではなく、化学や電気化学をはじめ、材料科学、地球科学など、幅広い分野と関係しています。従って、広い学問分野の様子をカバーしておく必要があります。そこが面白いと思います。わからないことや疑問点が次から次へと出てきますので、色々と調べて、他の研究者とは異なるアプローチで疑問点を解決していく楽しみもあります。

Q.今後の研究や抱負について教えて下さい。
 新しく合成された物質で行なった実験や、異なる条件下で行なわれた実験で、新規な現象が観測される場合があります。そこから新しい研究テーマを探してきます。私は理論的な研究を行なっていますので、理論的に仮説を立てて考えていくと、現象のメカニズムが説明できる場合や、こういうことが起こりそうだということが、ある程度予想できる場合があります。その予想を基に新しい研究の芽やテーマを展開させていきたいと思います。
 また、私が関わっている分野は、これからもますます学際的に相互作用しながら発展していくと思っています。固体イオニクスの研究は、最近話題になっている燃料電池や水素エネルギーなどと密接に関連しています。たとえば水素エネルギーの場合、水素を固体中に貯めるだけではなく、水素を取り出さなければいけない。つまり、水素が固体中を動かないといけない、あるいは、水素がイオンになって伝導しなければいけない。このように、私が行なっている研究テーマは、現在求められているエネルギー関連物質の研究とも密接に関係しています。

Q.先生が「熊本大学学術リポジトリを」を知ったきっかけを教えて下さい
 教員全員に流された、広報のPRメールがきっかけです。それから、数年前、評価関係の仕事をしていましたので、それが論文を登録する一つのきっかけになっています。つまり、大学からの情報発信ということに加え、大学教員の本来の仕事の延長線上にある最も簡単な社会貢献活動でもあると思うからです。

Q.先生の論文はこれだけ公開されています。論文を公開してなにか反応がありましたか?
 (データを見ながら)私の論文が色々な国でこれだけ読まれているとは知りませんでした。リポジトリによる公開と関係しているかどうかはわかりませんが、外国から多くの国際会議の案内が届くようになりました。一日に、関係がないものも含めて、数件届きます。あと、最近はオープンアクセスジャーナルがかなり増えて、そこから論文を投稿してほしいという依頼が多く届きます。ここ1~2年で、すごく増えました。タイトルを見て、直ぐゴミ箱に放り込みますが(笑)。

Q.
熊本大学学術リポジトリに限らず、リポジトリに登録されている論文をご利用になったことはありますか。あれば感想やご要望をお聞かせください。

 ほとんど無いですね。というか、どこから論文をダウンロードしたか詳しく見ていないのでわかりません。私の研究に必要な論文は広い分野に分布しています。従って、熊大にない、あるいは購読していない雑誌もあります。それで、検索サイトで著者や論文名を入れると、ネットにたまたま載っている場合もあり、それをダウンロードして使ったりしていますが、それをどこから持ってきているかまでは見ていません。もしかしたら、そこでリポジトリを使っているかもしれません。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」などで論文を無料公開することに対して、どのようなメリットや意義があるとお考えですか?

 研究というのは、研究成果を他の研究者に見てもらって、使ってもらわなければいけません。そうでなければ、研究をしてそれで終わり、ということになってしまいます。研究成果を見てもらい、さらに改良されるのか、応用して使われるのか、知的刺激を与えるのか、色々あると思いますが、とにかく、他の人に見てもらわないと始まらない。ということで、無料で公開されることには意義があると思います。
 私がリポジトリに投稿した論文は日本、フランス、アメリカなどをはじめ、色々な国からアクセスされているようですが、外国雑誌を購読するのは厳しいと思われる国からのアクセスも結構あります。そういった国の研究者が、フリーで論文を見ることができる、長い目で見て、そこには大きな意義があると思います。本来は、学術リポジトリではなく、学会が世界に向けて情報を発信しなければいけないと思います。一部の学会ではそれをやっていますが、今後、こういった流れが加速されることを期待します。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」に掲載された論文をどのような人に読んでもらいたいですか?

 興味のある人全員に読んでもらいたいのですが、物理学という専門分野の論文を一般の方が読まれても意味がわからないかもしれません。従って、実際には研究分野に関連した人が読むことになるかと思います。物理学だけではないかも知れませんが、専門分野の論文を読むのは結構ハードルが高く、色々な概念の理解を積み重ねないと内容が理解できない論文もありますので、それなりのトレーニングを積むことが必要だと思います。当然、一般の方に読んでもらえたら嬉しいですが、ちょっと、いや、かなりハードルが高いと思います。
 あとは、先程出た財政的に厳しい国の研究者や若手の研究者に利用してもらいたいと思います。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」について、ご意見、感想をお願いします。

 登録作業をやっていただけるのなら、どんどん件数を増やしてほしいと思います。我々は原稿をメールに添付するだけですから。あとは、他の大学のリポジトリで、雑誌掲載論文そのものが載っているのを見たことがありますが、リポジトリに登録される論文全てでそういうことが出来ればベストですね。雑誌掲載版の場合、使う側からすると、学術雑誌に掲載された論文そのものを見ることができれば、校正時のミス等も修正されていると考えられるため安心できるからです。他の分野でも同じかと思いますが、特に物理学の分野では、数字や記号がひとつ違うだけで全く違う結果になる場合もありますので、雑誌掲載版と最終原稿では安心感が違います。ちなみに私は校正時の修正も反映させた原稿をリポジトリに登録しています。著作権の関係で難しいかもしれませんが、雑誌掲載版がリポジトリに登録できる、そのようになるといいなと思います。

安仁屋先生、ありがとうございました。

安仁屋先生が「熊本大学学術リポジトリ」に登録されている論文をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
安仁屋勝先生 熊本大学学術リポジトリ 登録論文リスト

インタビュー日
2011年10月13日
インタビュー担当
浜崎(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 雑誌担当)
記録担当
森下(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 電子情報担当)

テーマ:短大・大学 - ジャンル:学校・教育

吉田道雄先生(教育学部附属教育実践総合センター)

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熊本大学 教育学部附属教育実践総合センター 吉田道雄先生
熊本大学研究者情報

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Q.先生の研究内容について教えてください。

一般に知られている専門領域としては、心理学になります。その中でも、特に集団との関わりをとおして人間を理解することが私の研究です。人間は誰でもそうですが、生まれたときから生涯を終えるまで集団との関わりを避けることができません。不幸なケースとして一人きりで亡くなることもありますが、その背景には集団の問題があります。つまり、根本には社会や人間との関わりを抜きにしては人間の行動を理解することはできないのです。
心理学領域の中では、社会心理学に近い領域ですが、専門的には「グループ・ダイナミックス(集団力学)」と呼んでいます。


現在の研究 (2つのテーマ)
I.「リーダーシップ(対人関係)トレーニングの開発と実践」
大学4年生の時に、恩師(三隅二不二(みすみ じゅうじ)先生)の研究室でリーダーシップを測定する尺度ができあがったところでした。それを使うと、望ましい結果をもたらすリーダーとそうでないリーダーが明らかになります。しかし、それだけで終わるのではなく、データを基にして、望ましいリーダーが発揮できるように働きかけることが大事です。そうした改善を目的にして開発されたのが「リーダーシップ・トレーニング」です。私はこうした研究が始まるときから関わりをもつことができたのです。そして、これがとても性にあっていて、1970年代から今まで40年以上も研究と実践を続けているわけです。
ところで、「リーダーシップ・トレーニング」というと少しばかり誤解が生じやすいと感じています。一般的にリーダーシップと聞くと、自分がリーダーではないのでトレーニングなど関係ないと思われがちだからです。そうしたことから、私はあえて「対人関係トレーニング」と呼ぶことも多いのです。
さらに、人と人との関わる「対人関係」は、筋肉と同じように訓練で鍛えることができると考えています。そこで私は「対人関係力」とか「リーダーシップ力」のように「力」を付けて、「みなさんエクササイズしましょう」と呼びかけているのです。
日本語は面白いですね。“自慢じゃないけど…”と言うときは必ず自慢します。そこで自慢じゃないのですが、私が今まで企画し、実践した研修やトレーニングは500回を超えています。大学の授業もそうですが、私はトレーニングもしっかり楽しみながら実施しています。

Ⅱ 「組織の安全に関する研究」
わが国の1970年代は、現在の中国と同じように工業製品を中心にモノを大量に生産しており、「集中豪雨的」とまで言われるような輸出をしていました。そこでは、品質向上や生産性の向上などが話題になっていました。しかし、それに伴ってミスや事故も頻繁に発生するようになりました。そこで、注目されたのがリーダーシップでした。その改善をとおして組織の安全を高めることができるのではないかという期待が生まれました。こうした私の研究対象も組織の安全や事故防止へと拡大していきました。
そのため、私としては、「組織安全学」の確立を提唱し、研究を進めています。今回の原子力発電所のように、とても衝撃的で大きな事故もありますが、小規模の組織におけるちょっとした不祥事なども含めて、組織の安全を研究の対象になっています。


研究をはじめられたきっかけ
父の影響が大きいです。私が高校生の頃、西日本新聞に“九大群像”というシリーズが掲載されていました。その中に三隅先生のリーダーシップ理論の紹介があったのですが、父がそれを切り抜いていました。そして、「こんな研究って面白そうだな」などといいながら私に見せたことがありました。それが集団力学との出会いだったわけです。高校の授業には心理学はありません。そんなこともあって、授業で習わない心理学は面白そうだと考えていたうえに、新聞を父が切り抜きまでしていたことから、こんなことをしたいなあという気持ちになりました。
そのためもあって、大学に入学した当初からしっかり目的意識を持っていました。すでにお話ししたように、当時の三隅研究室ではリーダーシップ測定尺度で緻密なデータを得るためのノウハウが蓄積されていました。その流れの中でリーダーシップ・トレーニングを開発しようという動きが生まれ、私はそんな草創期に巡り合ったのです。
当時は学会もおおらかで、「日本グループ・ダイナミックス学会」には10代の学生で会員になりました。これも自慢ではありませんが…、やはり自慢話になりますね。

【参考】熊大通信, Vol. 21, p. 6-7, 2006 (2006年7月)


今後の抱負
「リーダーシップ・トレーニング」が私のライフワークです。人との関わりが続く限り対人関係は存在しますから、リーダーシップ自体がもともと生涯学習ということになります。そこで、これからも「リーダーシップ・トレーニング」に新しいアイディアや手法を導入していきたいと思っています。どこまで行っても「ベスト」には到達できませんが、それでもベストを追及するところが、われながら面白いなあと思います。また最近は、健康で安全な社会を作ることが大事になってきましたから、それらも包み込みながら研究を進めていきたいと考えています。



Q.「熊本大学学術リポジトリ」について教えてください。

登録いただいたきっかけ
ずいぶんと前のことなので、もうはっきりとは覚えていませんが、たぶん、全学へ宛てたメールによるご紹介が最初でしょう。自分からリポジトリへアクセスしていたという記憶はありません。
その後、個別に連絡をいただいて、論文を投稿したことは確かです。


吉田先生は、110件以上の論文を登録いただいています。論文公開後に、なにか変化がありましたら教えてください。
直接反応があったというよりも、いろいろな方から尺度を使用していいかとか、論文を引用したいといった問い合わせがあります。これは、間違いなく熊大学術リポジトリの効果だと考えています。
もっとも、熊大の学術リポジトリを検索したかどうかを確認はしていませんから、CiNii等を経由してリポジトリの論文へたどり着かれた可能性はあります。その場合は、利用者ご自身に熊大リポジトリを利用したという意識はないかもしれません。


吉田先生ご自身が、リポジトリを利用されることはありますか?
よく利用しています。
CiNiiを経由することもありますが、著者アクセスから論文を探すことが多いですね。私の授業では、最初の時間にリポジトリとCiNiiの紹介をしています。大学院生でも意外と知らないことが多いのですが、学部生のうちから知っておくといいですね。


「熊本大学学術リポジトリ」などで論文を無料公開することに対して、どのようなメリットや意義があるとお考えですか?
単純なことですが、個人でPRできない方々に読んでいただけることが最大のメリットです。
そもそも論文は読んでもらうために書いているのですから、少数の人からしか読まれないというのでは寂しいですよね。大勢の方に読んでもらえるということは、とにかくそれだけで素晴らしいことです。今では、なくてはならないものだと思っています。

吉田先生の論文で、ダウンロード数1位の論文はこちら↓
対人関係トレーニングの開発と実践 : トレーニング・マニュアル作成の試み (3)


「熊本大学学術リポジトリ」に掲載された論文をどのような人に読んでもらいたいですか?
もちろんどなたにも読んでいただきたいですね。あえて言えば、組織や団体の責任者やリーダーシップを発揮することが期待されている方々、そして、組織の安全に関心をお持ちの皆さまに読んでいただきたいと思います。もちろん、現実にもそうなっていると思っています。
お問い合わせなどから推察すると、教育関係者や企業組織のメンバー、さらに看護師の方々にも読んでいただいているようです。



Q.「熊本大学学術リポジトリ」へのご意見、ご感想をお願いします。

論文を登録した順番ではなく、掲載が新しいものから(降順)表示されるといいですね。
最新の論文が一番後ろに表示されてしまうのは、唯一の問題だと思います。もうひとつは…かなり難しい要望になりますが、著者の希望する分類もできればベストですね。(といっても、担当者にとっては大変ですね。)



吉田先生、どうもありがとうございました。

今回の訪問で、先生の最新著作も図書館へ寄贈いただきました。
【Library Lovers】“教員著書”コーナーに置いていますので、ご利用ください。(貸出可)

吉田先生の近著(2011.6)
 「実践的リーダーシップ・トレーニング : 元気で安全な組織づくりの基礎とノウハウ」



インタビュー日
2011年10月11日
インタビュー担当
藤浦(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 電子情報担当)
記録担当
浜崎(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 雑誌担当)

テーマ:短大・大学 - ジャンル:学校・教育

中内哲先生 (法学部)

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熊本大学 法学部 中内哲先生
熊本大学研究者情報

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Q.先生の研究内容についてお聞かせください。

熊本大学が高校生向けに作成している「がんばれ受験生」というパンフレットの2012(平成24)年版に、私の専攻領域についてメッセージが掲載されているので、これを参考にしていただければ、「ああ、なるほど」みたいなイメージがわくと思います。

 (内容抜粋)
私の専門領域は労働法。基本的に民間企業とそこで働いている人々とのトラブルの解決を考える学問です。以前は強かった労働組合の影響力が弱まり、現在は、労働者個人の権利意識が強まっています。また、公務員試験や社会保険労務士という資格試験で問われる科目でもあるので、労働法は一社会人としての素養といってもいいのかもしれません。かといって「法律」だけを勉強すればいいわけではありません。労働法は、その時代時代の政治・経済・社会状況にかなり敏感に反応するので、法律以外の学問にも興味関心が持てるとさらに理解が深まります。
 詳しくはこちら(熊本大学案内2012)

さらに細かく自分の研究対象というと、「在籍出向関係」と表現できます。例えばAという会社に就職した。A社との関係はつなげておくけど、A社にはポストがないから子会社Bに行ってくれ、と言われることは現実にいくらでもあるわけですよね。A社とはつながっているけど実際働くのはB社。じゃあ、このA・B両社と自分(労働者)の三者関係ってどうなるの?が意外と難しい話なんです。どこかで問題が起こった時に、自分にとっての親会社Aが責任とってくれるの?それともB社?両社共同で面倒見るの?とか考えるとそう簡単には答えが出ないように思うので、研究を深めたいと考えています。ぜひ、熊本大学研究シーズ集もご覧ください。

Q.労働法をご専門にされているきっかけは何ですか?

まず両親の影響が大きいでしょう。両親は1960年安保反対闘争を大学で担った世代です。その当時の労働組合は一つの大きな社会的存在だったはずで、時のニュースや世相が親子で話題になる中で、働くこととか、労働組合とか、それを取り巻く法制度だとかについて自然に対話していたんだと思います。

高校の時には中国史が大好きだったんです。大学で中国史(東洋史)を勉強するか、法律じゃなくて政治学を勉強するか、で悩んだんですね。当時の文学部哲学科出身の担任の先生が、「中国史が好きだって気持ちは趣味で保てばいい。政治がおもしろいっていうんなら、法学部とか政経学部とかへ進学した方が社会に出るときにいいんじゃないか」と言ってくださって、大学の志望学部を法学部にしたんです。でも繰り返しですけど、法律専攻じゃないんです。

何といっても決定的なきっかけは、師匠である浜田冨士郎先生(当時、神戸大学法学部教授。現在、神戸大学名誉教授・弁護士)との出会いです。話すと長くなるのですが、今から思い起こしても不思議なご縁としか言いようがありません。その時からもう22年あまり経ちました。

Q.労働法のおもしろさを具体的に教えてください。

民法という学問領域がもともとの労働法の生みの親なんです。民法だと立場が入れ替わることがあります。物を買う方が物を売る立場になることだってあるし、お金を貸している方が借りる側に回ることもあります。立場の互換性っていうのがありうるんです。けれども労働法では、労働者と使用者の立場が入れ替わる事はあまり想定できないんですね。そうした価値対立がはっきりしているところが、少なくとも自分の性に合ったようです。弱い立場の労働者をどう守るのか、というドラマに感情移入しやすい、という点をおもしろさに挙げることができるかもしれません。

Q.今後の研究の抱負を教えてください。

先ほど話題にしました「在籍出向関係」について、まだ途上なもんですから、それをなんとか完結させたいです。私は博士号を持っていないので、この研究の諸成果をまとめると一つの世界観が提示できるのだとすれば、それを基に博士号を申請できるようにしたいな、というのが研究上の大きな目標です。

Q.熊本大学学術リポジトリを知ったきっかけは何ですか?

図書館の広報を通じて知ったんだと思います。教授会でも「リポジトリというのがあって、登録いただけたらありがたい」というアナウンスが、制度発足からずっとなされていましたし。

Q.中内先生が熊本大学学術リポジトリに登録されている論文のなかで、ダウンロード数がひと際多いものがありますが、その理由についてどう思われますか?

おそらく、ダウンロード数がひと際多い論文をダウンロードあるいはアクセスされた方は一般の方ではないと思います。大学教員(研究者)として労働法を担当している者か、大学院で労働法を専攻していていずれ大学教員になりたいと思っている方が、今抱えている課題との関係でダウンロードしているんじゃないかと思います。

研究者や大学院生が論文を書こうとする時に、自分よりも前に同じようなテーマでどういう論文が発表されているのか、その筆者はどういう意見だったのか、という情報を集めるはずです。そうした過程の一環で中内の論文もダウンロードされていると推測します。

Q.「熊本大学学術リポジトリ」に掲載された論文をどのような人に読んでもらいたいですか?

広く一般の方に見ていただきたいですね。そうは言っても、論文なんで、一般の方が見てもやっぱりわかりにくい。そうすれば結果としてアクセスされる方、ダウンロードまでしてくださる方は、専攻を同じくする研究者か、大学院生になってしまうと思いますが、あらゆる階層の方に見てもらいたいという気持ちで論文を書きリポジトリにアップロードして頂いています。

また、中内の専攻領域である「労働法」の世界では、弁護士の先生方も大変大切な存在なんです。実際に労働事件に直面し手助けしている方々がどう考え何を思うのか、というのも労働法研究者にとって大事なのです。

Q.「熊本大学学術リポジトリ」などで論文を無料公開することに対して、どのようなメリットや意義があるとお考えですか?

まず、検索可能性が大いに拡がります。一応検索に引っ掛かれば論文を見てくださる。そのうえで検索した方にとって意味のある、あるいは批判すべき対象だということになれば、脚注に引用していただける、というのが何よりのメリットです。研究者や大学院生が時間と労力をかけて書いた論文が誰にも見てもらえないという状態は、一番悔しいし残念なことだと思うんですね。その可能性をなるべく小さくして、むしろ論文が多くの方々の目に触れる機会を格段に増加させうることが、私にとってのリポジトリの魅力、メリットです。

中内先生、ありがとうございました。
とてもわかりやすくお話いただき、そして楽しくインタビューさせていただきました。
中内先生は、法律関係の他にも労働安全衛生関係、自動車・船舶関係、無線関係、ダイビング関係、武道等、広い分野で29もの資格を持っていらっしゃいます。担当者とはダイビングの話で盛り上がりました!

中内先生が「熊本大学学術リポジトリ」に登録されている論文をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
中内哲先生 熊本大学学術リポジトリ 登録論文リスト

中内先生のホームページ

インタビュー日
2011年10月6日
インタビュー担当
村上(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 閲覧担当)
記録担当
藤浦(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 電子情報担当)

テーマ:短大・大学 - ジャンル:学校・教育



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