熊本大学附属図書館 研究者インタビュー

熊本大学学術リポジトリ 研究者インタビューのページです。

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安仁屋勝先生(理学部)

このインタビューは、九州地区の大学図書館が合同で開催する
Library Lovers'キャンペーン2011における熊本大学附属図書館独自イベントの一部です。独自イベント一覧
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熊本大学理学部 物理学科 安仁屋勝先生
熊本大学研究者情報

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Q.先生の専門分野についてお教えください。
 専門分野は物性物理学の理論で、固体イオニクスや構造不規則系の研究を行なっています。
エレクトロニクスという言葉はどこかで聞いたことがあるかと思います。電子が物質中を動き回って色々な現象が起きます。これらの現象、更にはこれらの応用までを含めた分野のことをエレクトロニクスと言います。それに対して、電子ではなく、イオンが固体中をあたかも液体中と同じように動き回る物質群があります。固体中におけるイオンの運動とそれに伴う現象、更にはこれらの現象の応用までを含めた分野の総称を一般的に固体イオニクスと言います。
 構造不規則系とは、原子が結晶のように規則正しく並んでいるのではなく、ランダムな原子配列をもつ物質のことを言います。自然界には原子が規則正しく並んでいない液体やガラス等の物質も数多く存在しますが、これらの物質が示す現象の物理的背景は謎だらけです。また、それらを記述する理論的枠組もまだよくわかっていません。
 これら二つを主なテーマとして研究しています。

Q.現在の研究について教えて下さい。
 いくつかの研究を行なっていますが、固体イオニクスと構造不規則系の二つを組み合わせた超イオン導電ガラスにウェイトを置いた研究をしています。超イオン導電ガラスはガラスの一種ですが、ガラスの中でイオンが動くメカニズムを明らかにする研究や、中距離に渡って原子がどのように並んでいるか、また、ガラスの構造と性質との関係を明らかにする研究等を行なっています。
 液体が凍結された状態をガラスと呼びますが、ガラス化の過程も研究しています。分かりやすくいえば、液体の温度を下げていくと、時間と共に配置を変えながら運動していた原子の動きが鈍くなり、ある温度で固まってガラスになります。すなわち、温度の降下や時間の経過と共に液体中での原子の並び方や連結の仕方が変わっていきます。専門用語では構造緩和と言いますが、それの機構に関する研究をしています。
 イオン導電性ガラスの中には光を当てることによって、通常とはかなり異なる振舞いを示すものもあります。こういった性質と関連した超イオン伝導と非線形光学に関する研究や、アモルファス半導体における光誘起現象の研究も行なっています。他には、超イオン導電体の結合性と物性、イオン導電体の熱電効果、イオン液体、液体半導体、金属ガラス等の基礎物性の研究をしています。

Q.この研究をはじめられたきっかけは何ですか?
 マスターとドクターの頃の経験です。マスターの頃は液体金属の研究を行ない、ドクターに進学してからイオン伝導の研究を始めました。
 私の研究分野は物理学だけではなく、化学や電気化学をはじめ、材料科学、地球科学など、幅広い分野と関係しています。従って、広い学問分野の様子をカバーしておく必要があります。そこが面白いと思います。わからないことや疑問点が次から次へと出てきますので、色々と調べて、他の研究者とは異なるアプローチで疑問点を解決していく楽しみもあります。

Q.今後の研究や抱負について教えて下さい。
 新しく合成された物質で行なった実験や、異なる条件下で行なわれた実験で、新規な現象が観測される場合があります。そこから新しい研究テーマを探してきます。私は理論的な研究を行なっていますので、理論的に仮説を立てて考えていくと、現象のメカニズムが説明できる場合や、こういうことが起こりそうだということが、ある程度予想できる場合があります。その予想を基に新しい研究の芽やテーマを展開させていきたいと思います。
 また、私が関わっている分野は、これからもますます学際的に相互作用しながら発展していくと思っています。固体イオニクスの研究は、最近話題になっている燃料電池や水素エネルギーなどと密接に関連しています。たとえば水素エネルギーの場合、水素を固体中に貯めるだけではなく、水素を取り出さなければいけない。つまり、水素が固体中を動かないといけない、あるいは、水素がイオンになって伝導しなければいけない。このように、私が行なっている研究テーマは、現在求められているエネルギー関連物質の研究とも密接に関係しています。

Q.先生が「熊本大学学術リポジトリを」を知ったきっかけを教えて下さい
 教員全員に流された、広報のPRメールがきっかけです。それから、数年前、評価関係の仕事をしていましたので、それが論文を登録する一つのきっかけになっています。つまり、大学からの情報発信ということに加え、大学教員の本来の仕事の延長線上にある最も簡単な社会貢献活動でもあると思うからです。

Q.先生の論文はこれだけ公開されています。論文を公開してなにか反応がありましたか?
 (データを見ながら)私の論文が色々な国でこれだけ読まれているとは知りませんでした。リポジトリによる公開と関係しているかどうかはわかりませんが、外国から多くの国際会議の案内が届くようになりました。一日に、関係がないものも含めて、数件届きます。あと、最近はオープンアクセスジャーナルがかなり増えて、そこから論文を投稿してほしいという依頼が多く届きます。ここ1~2年で、すごく増えました。タイトルを見て、直ぐゴミ箱に放り込みますが(笑)。

Q.
熊本大学学術リポジトリに限らず、リポジトリに登録されている論文をご利用になったことはありますか。あれば感想やご要望をお聞かせください。

 ほとんど無いですね。というか、どこから論文をダウンロードしたか詳しく見ていないのでわかりません。私の研究に必要な論文は広い分野に分布しています。従って、熊大にない、あるいは購読していない雑誌もあります。それで、検索サイトで著者や論文名を入れると、ネットにたまたま載っている場合もあり、それをダウンロードして使ったりしていますが、それをどこから持ってきているかまでは見ていません。もしかしたら、そこでリポジトリを使っているかもしれません。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」などで論文を無料公開することに対して、どのようなメリットや意義があるとお考えですか?

 研究というのは、研究成果を他の研究者に見てもらって、使ってもらわなければいけません。そうでなければ、研究をしてそれで終わり、ということになってしまいます。研究成果を見てもらい、さらに改良されるのか、応用して使われるのか、知的刺激を与えるのか、色々あると思いますが、とにかく、他の人に見てもらわないと始まらない。ということで、無料で公開されることには意義があると思います。
 私がリポジトリに投稿した論文は日本、フランス、アメリカなどをはじめ、色々な国からアクセスされているようですが、外国雑誌を購読するのは厳しいと思われる国からのアクセスも結構あります。そういった国の研究者が、フリーで論文を見ることができる、長い目で見て、そこには大きな意義があると思います。本来は、学術リポジトリではなく、学会が世界に向けて情報を発信しなければいけないと思います。一部の学会ではそれをやっていますが、今後、こういった流れが加速されることを期待します。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」に掲載された論文をどのような人に読んでもらいたいですか?

 興味のある人全員に読んでもらいたいのですが、物理学という専門分野の論文を一般の方が読まれても意味がわからないかもしれません。従って、実際には研究分野に関連した人が読むことになるかと思います。物理学だけではないかも知れませんが、専門分野の論文を読むのは結構ハードルが高く、色々な概念の理解を積み重ねないと内容が理解できない論文もありますので、それなりのトレーニングを積むことが必要だと思います。当然、一般の方に読んでもらえたら嬉しいですが、ちょっと、いや、かなりハードルが高いと思います。
 あとは、先程出た財政的に厳しい国の研究者や若手の研究者に利用してもらいたいと思います。

Q.
「熊本大学学術リポジトリ」について、ご意見、感想をお願いします。

 登録作業をやっていただけるのなら、どんどん件数を増やしてほしいと思います。我々は原稿をメールに添付するだけですから。あとは、他の大学のリポジトリで、雑誌掲載論文そのものが載っているのを見たことがありますが、リポジトリに登録される論文全てでそういうことが出来ればベストですね。雑誌掲載版の場合、使う側からすると、学術雑誌に掲載された論文そのものを見ることができれば、校正時のミス等も修正されていると考えられるため安心できるからです。他の分野でも同じかと思いますが、特に物理学の分野では、数字や記号がひとつ違うだけで全く違う結果になる場合もありますので、雑誌掲載版と最終原稿では安心感が違います。ちなみに私は校正時の修正も反映させた原稿をリポジトリに登録しています。著作権の関係で難しいかもしれませんが、雑誌掲載版がリポジトリに登録できる、そのようになるといいなと思います。

安仁屋先生、ありがとうございました。

安仁屋先生が「熊本大学学術リポジトリ」に登録されている論文をご覧になりたい方はこちらをご覧ください。
安仁屋勝先生 熊本大学学術リポジトリ 登録論文リスト

インタビュー日
2011年10月13日
インタビュー担当
浜崎(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 雑誌担当)
記録担当
森下(熊本大学教育研究推進部図書館ユニット 電子情報担当)
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テーマ:短大・大学 - ジャンル:学校・教育

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